シンポジウム・空知の炭鉱(ヤマ)の女性たちが語る集い
−炭鉱主婦会・炭婦協の歴史に学ぶ−の開催

産炭地研究会・炭鉱主婦会調査グループでは、2010年2月から、北海道内の炭鉱主婦会、日本炭鉱主婦協議会(炭婦協)に関する調査を開始しています。具体的には、空知炭鉱(歌志内)、三井芦別炭鉱(芦別)、幌内炭鉱(三笠)、太平洋炭砿(釧路)の炭鉱主婦会の関係者や、炭鉱離職者主婦の会など、主婦会OB組織の関係者に聞き取り調査を実施し、関連する史資料の収集を行っています。

調査研究の一環として、2013年11月30日に「空知の炭鉱(ヤマ)の女性たちが語る集い−炭鉱主婦会・炭婦協の歴史に学ぶ−」(主催:産炭地研究会(JAFCOF)・札幌学院大学、後援:NPO法人炭鉱の記憶推進事業団)というシンポジウムを、北海道岩見沢市で開催しました。

根田久枝さん(元・空知炭鉱主婦会会長・道炭婦協会長)、斉藤照子さん(元・幌内炭鉱主婦会会長)、岡部規子さん(元・三井芦別炭鉱主婦会会長)、米森康子さん(元・住友赤平炭鉱主婦会会長)、佐藤邦子さん(元・太平洋炭砿主婦会会長・炭婦協会長)の5名の方をパネリストとして、炭鉱生活における地域一体となった生活の様子、炭鉱事故におけるさまざまな記憶、炭鉱主婦会のさまざまな活動の思い出、炭鉱の解散時や、炭婦協解散時の話がなされました。当日の参加者は120名におよび、パネリストの話に耳を傾け、時には涙をする方もいました。シンポジウムの最後は、元主婦会の女性が腕を組んで「炭婦協の歌」を披露しました。

シンポジウム趣旨説明

北海道にはかつて多くの炭鉱(ヤマ)がありました。それぞれの炭鉱において、働く夫や息子たちを支え、炭鉱での生活を守るために、「命と暮らしを守る」さまざまな活動を行った女性たちがいました。それぞれの炭鉱で組織された炭鉱主婦会と、その上部組織としての日本炭鉱主婦協議会(炭婦協)です。

炭鉱主婦会や炭婦協は、それぞれの炭鉱の労働組合や、日本炭鉱労働組合(炭労)とともに、「生活と権利を守るための運動」、「夫や息子の命を守る運動」をスローガンに、生活に関わるさまざまな活動を行ってきました。例えば、戦後直後では、産児調整、生活刷新運動、福利厚生を求める運動、物価値上げ反対闘争などにかかわり、炭鉱の企業には保安、労災補償を求める運動を求める一方、地域での生協や消費者協会の活動にも関わっています。

さらに、各地域の婦人(女性)連絡協議会、主婦連絡協議会(労働組合の家族会)でも影響力を発揮し、産炭地の地域社会をさまざまな面で支えた活動をされていました。炭鉱主婦会の中から、当時は珍しかった女性議員になり、地域政治に関わるようにもなりました。1960年代以降の合理化に伴う閉山に対して、閉山阻止闘争にも炭鉱主婦会・炭婦協の役割はとても大きいものでした。このような意味で、戦後北海道の女性運動の大きな担い手の一つであり、組織的に活動する女性運動の核として機能したことは評価されるべきだと考えます。

現在、炭鉱遺産を活用した地域活性化や、かつての炭鉱での社会を見つめ直し、そこから学ぶ試みが多くなされています。産炭地研究会・炭鉱主婦班では、2010年から、炭鉱主婦会、炭婦協の歴史資料の発掘と、関係者の方への聞き取り調査を実施してきました。このシンポジウムでは、その成果の一つとして、北海道の炭鉱主婦会と炭婦協で中心的な役割を果たした方から、それぞれの経験を伺い、炭鉱主婦会、炭婦協の意義を再確認することで、現在の旧産炭地、北海道の地域社会に資する炭鉱社会の歴史を皆さんと分かち合いたいと思います。

主催:産炭地研究会(JAFCOF)・札幌学院大学
後援:NPO法人炭鉱の記憶推進事業団

シンポジウムの際の写真

新聞記事


北海道新聞空知版:2013年12月17日