書籍『戦後日本の出発と炭鉱労働組合: 夕張・笠嶋一日記』の出版

夕張・笠嶋一日記

このたび(2022年10月)、産炭地研究会のメンバー6人の共著として、御茶の水書房より標記の書籍を出版しました。詳細は版元のページ、または上智大学総合人間科学部のページをご覧ください。

書籍からは省略された日記記述

紙幅の関係で省略された日記記述が多くありますので、この省略分を本ページにて紹介することにしました。

ここから省略された日記記述をご覧下さい(PDFファイル)

実際の日記記述

 『大原社会問題研究所雑誌』777号(2023年7月号)にて島西智輝・立教大学教授から書評いただきました。その中で、「実際の手書きの日記の様子が見られないのが惜しい」というご指摘があり、それを受けて本頁に、手書き日記現物の画像を掲載します。島西先生、ご指摘をありがとうございました。 Diary

推薦のお言葉

本書に対して、学会や石炭産業の関係者より、以下のような推薦のお言葉をいただいております。本当にありがとうございます。なお、ホームページへの掲載について許可を頂いたものについてのみ、掲載しております。

  • 一炭鉱夫の日記を翻刻した本書は、消失しがちな戦後日本を支えた庶民の資料(ドキュメント)を、できるだけ当時の雰囲気を読み取れるように再現した労作です。本書は「4つの解説」によって示唆されているように、さまざまな読み方が可能です。たとえば、個人レベルから見れば、笠嶋さんは「なぜ組合専従の道に進んだのか?」というライフコースにおける「転機」の分析が考えられます。そして何よりも、この資料は、ひとりの個人生活史と炭鉱労働組合という組織史、さらによりマクロな政治史とのあいだの関係について考える想像力を鍛える一冊と言えるでしょう。(原田謙・実践女子大学)

  • 翻刻された日記本文の理解を助けるために、ほとんど全ての日記に、中澤ら共著者による詳細な注釈が施された労作だ。1948年、当時20歳の炭鉱夫の「本を読みたい」、自作した本箱を一刻も早く完成して「早く良書を入れたい」という向学心が胸を打つ。(長谷川公一・尚絅学院大学)

  • 炭坑夫が自らつけた日記が、手に取りやすい書籍の形で、しかも研究者による解題つきで刊行されたことはたいへん意義深いものだと思います。多面的な生活の記述が、思いの記述とともに詳細になされていて、読んでいても楽しく、また資料としても一級のものだと思いました。(宮内泰介・北海道大学)

  • 炭鉱の研究に取り組んでいた時、何度も笠嶋さんの御宅にお邪魔して、炭鉱労働について教えを受けました。このたび、笠嶋さんの日記と自分史の重要部分が読まれることになったことを大変嬉しく思います。すごく手間のかかる作業をやりとげられた産炭地研究会の皆様に本当に感謝いたします。(市原博・獨協大学)

  • 戦後日本の経済を支えた炭鉱労働の状況、労働組合や公民館など今日に連なる制度の始まり、映画のことなど、本当に貴重な記録だと思います。それが保存され、解説とともに出版されたことにはとても大きな意義があると確信します。(三井さよ・法政大学)

  • 戦後日本社会の重要な足跡を北海道ならではの視点で振り返る大変重要な研究と拝察します。(相澤真一・上智大学)

  • 炭鉱で働いた一人物のライフヒストリーを追った重要な資料だと思います。炭鉱が盛んだった時代の記憶が薄れていく中、炭鉱で働いていた人達はこういう性格、などというような固定観念が定着、記号化される風潮を食い止める資料にもなると思います。「はじめに」では、紙面の都合上記載する内容をいくつか削除したことが書かれていますが、それを抜かしても、炭鉱で生きた人の一時代の記憶を追体験できる資料です。この書籍は研究資料として大いに力を発揮されることは当然のこととして、一般の読者にも、炭鉱の生活を知る手掛かりとして大いに活用される資料になると思います。(高橋史弥・自営業)

  • 石炭産業は日本にとどまらず、国際的に共有可能な、その意味で普遍性の高い、人間の営みが重ねられた場だと考えます。その歴史を知り、地域に還元し、次世代に残すためにはアーカイブ整備が不可欠であり、この度の刊行は時宜を得たものと僭越ながら敬意を表したいと思います。(中島康予・中央大学)

  • 以前から中澤さんたちの産炭地の研究がかたちとなっていくことを期待しておりました。笠嶋一さんというJust one witness(Carlo Ginzbug)の言葉によって、「夕張」という歴史的な出来事に内包された血と骨が、生かし直されるのだという思いを新たにしています。冒頭の写真から引き込まれるものがあります。著者、ご遺族のみなさまに深く感謝申し上げます。(新原道信・中央大学)

  • 日本の近代化及び歴史の興亡盛衰に炭鉱はいつも重要な転換期を共にした。この1冊はまた労働運動というレンズを中心に炭鉱と日本の当時の社会像を考察できる意味深い業績だと思う。(柳永珍・九州産業大学)

  • 日本の近代化を牽引し、現在の社会課題の噴出状況を結果として先取りすることとなった産炭地に生きた労働者の個人史を、忠実に再現し、かつ適切に処置・解説した上で公表可能とした労作に、心から敬意を表します。現在、青森県のむつ小川原開発・核燃料サイクル施設問題に関して歴史資料の整理を進めている当方にとって、貴重な先行文献となります。 (茅野恒秀・信州大学人文学部)

  • 戦後夕張の正史を知るためには、炭鉱労働組合の解散記念誌、夕張市史等は欠かす事ができません。笠嶋氏は、これらを編纂する際に先頭になってやってくれた人だ、とかつて共に編纂に携わった元労働組合の翁より伺ったことがあります。個人的には、とりわけ「新夕張炭鉱」解散記念誌で地域の特性を学べました。さて、ご著書は、氏の青年期における人格や行動指針の形成などに影響を与えたであろう出来事や事柄が一次資料によって垣間見え、興味が尽きません。同時代は炭都夕張が隆盛を誇るピークの時期に突入する前夜とも言え、等身大の人物を通してありありと映るその時代の情景に没入できる気が致します。ご著書を読破した後、改めて現代にいたるまでの夕張の正史に向き合いたいと思っております。 (原田唯史・夕張郷土史保存研究会)


  • なお、北海道立図書館からはtwitterで紹介いただいています。
  • また日本ライフストーリー研究所facebookでも紹介されました。